沖磯渡船の基本的なシステム(ルアーマン向け)

沖磯渡船の基本的なシステム(ルアーマン向け)

おかっぱりルアーマンにとって「沖磯」は夢のパラダイスというイメージがあるかと思います。私もそうでした。初めての沖磯では適当に投げたルアーにヒラスズキが掛かり、フカセ釣りをすればグレやイサキが入れ食いでした。

伊豆諸島鵜渡根島のタタミ根

そんなパラダイス沖磯ですが、敷居が高い印象があり二の足を踏む方も多いのが現状です。

実際に多くの渡船屋では磯師(※)が優先となっておりますが、徐々にルアー釣りに対して理解をしてくれる渡船屋も増えてきました。現在では沖磯でルアーマンを見かけることも少なくありません。勇気を出してパラダイスへの一歩を踏み出してみませんか?

※磯釣りのカテゴリー内でも優先順位があり、底物(石鯛、石垣鯛)が、上物(メジナ、イサキ)よりも優先されることが多々あります。

はじめに

沖磯に渡船するにあたっての基本的なルールが何点かあり、地域や渡船屋によっても微妙な差はあります。本記事では初めて沖磯にチャレンジする方向けに基本的なルールを挙げます。

最低限の装備

  • ライフジャケット
  • 磯ブーツ(スパイク or フェルトスパイク)
  • 帽子、グローブ、ヒップガード

まず、ライフジャケットが絶対に必要です。船釣りで使用する自動膨張式のライフジャケットではなく、ベスト型のライフジャケットを購入しましょう。磯での転倒、転落時に体を守る効果もあります。

自動膨張式のライフジャケットは、浮力体が磯の岩で切れてしまうため絶対にNGです。

ライフジャケットと同じくらい重要なのが磯ブーツです。スパイク、フェルトスパイクどちらでも構いませんが、必ず金属のスパイクが付いた磯ブーツを履きましょう。岩の材質にもよりますが、磯の上は想像以上に滑ります。

フェルトスパイクは足が楽ですよ

更に帽子、グローブ、ヒップガード、そして可能な限り長袖のウェアを着用します。磯で転倒すると、鋭い岩やフジツボ、カキ等により大けがをします。出来るだけ肌の露出を減らすことが重要です。

これら最低限の装備ができない場合は、磯には入れません。私が初めて沖磯に行った時、隣で釣りをしていた方が磯から転落して亡くなるという事故がありました。その方はベテランでしたが、ライフジャケットを着用していませんでした。

もう二度と、そんなやりきれない思いをしたくはありません。たいへん危険な遊びであることを肝に銘じて、磯に臨みましょう。

その他あると便利なグッズ

  • 水汲みバケツ
  • 竿掛け(チャランボ)

ロープのついた水汲みバケツがあると便利です。磯では海面近くまで降りれない場合も多く、海水は基本的に水汲みバケツで汲みます。魚を血抜きする場合や手を洗う場合等に重宝します。

水汲みバケツ

チャランボ、竿受けもあると便利です。竿を直接磯に立てかけると、鋭い岩肌で竿に傷が付くことがあります。また、風により竿が倒れることもあります。竿を立てられる何らかのアイテムがあると便利です。

荷物は軽量コンパクトに

渡船では船から磯、磯から船への荷渡しで半ば放り投げるように扱います。余りにも重たい荷物、50Lクラスの大きなクーラー、蓋の無いケースは大変な迷惑になりますので控えてください。

※両端にハンドルが付く両手で持つタイプのクーラーボックス(例:スペーザホエール、トランク大将)は渡礁時の受け渡しが難しいため嫌煙する船長もおります。ブリッジ型のハンドルが付く片手で持てるタイプのクーラーボックス(ライトトランク、スペーザ)が無難です。

また、全ての荷物には大きな字で名前を書きましょう。名前を書く位置は上蓋の上面、ロッドケースは表裏に書くとよいでしょう。混雑する渡船の上で、荷物の持ち主が即座に判断できないと混乱を招きます。

なおロッドはできるだけロッドケースに入れます。裸の状態ではロッドを放り投げられた際に破損のリスクがあります。

※磯に渡るタイミングでの滑落等の事故が多いため、可能な限り両手がフリーの状態で渡礁します。ロッドを持っての渡礁は危険です。

船から磯へ荷物の受け渡し

繰り返しになりますが、荷物は乱暴に受け渡しします。荷物を投げる側(船側)、荷物を受け取る側(磯側)双方で協力して受け渡ししましょう。私は磯師の中では年齢が若いこともあり、積極的に他のお客さんの荷物を投げています。

その際に重要なこととして、船長の視界を遮らないことがあります。船の舳先に人が固まるとチャカ付け(磯に船の舳先を押し付けること)している点が船長から見えなくなり危険です。荷物を投げる方は舳先の左舷側に並び、バケツリレーの要領で荷渡しします。

舳先の左舷側での荷渡しが基本

また荷物を受け取る側(磯側)は、磯と船の舳先に足を挟まれない様に十分な注意が必要です。挟まれた場合は複雑骨折します。

渡礁時の注意

チャカ付け式」といわれる船の舳先を磯に押し付けてくれる渡船屋であっても、船から磯に渡る際には軽くジャンプして渡ります。

間違っても”船の舳先”と”磯”の両方を跨ぐように足を付けてはいけません。もしその状態で波が来て舳先が持ち上がった場合、転倒、転落、最悪船と磯に体が挟まれてしまいます。必ず、安全を確認し、自分のタイミングでジャンプして渡礁しましょう。

※伊豆七島などで潮が速く波の荒いエリアでは、渡礁時にチャカ付けしない「飛び乗り式」の場合がほとんどです。タイミングを見計らって船の舳先から思い切りジャンプして渡るベテラン向けのエリアとなります。

飛び乗り式」の場合は、波で船の舳先が上がったタイミングでジャンプするのがコツです。急かされても必ず自分のタイミングで渡ります。渡船に慣れるまでは「チャカ付け式」の渡船で経験を積みましょう。

また重要な点ですが、リュックサックを背負っての渡礁は危険です。船に引っかかる確率が上がるだけでなく、万一水中に落下した際には体の動きを阻害することで生存確率を下げてしまいます。

繰り返しになりますが、渡礁時は「両手フリーかつできるだけ身軽な状態」で「ジャンプして」渡りましょう。

渡礁後は荷物をコンパクトに纏めておく

磯の上で最初にすることは、荷物を安全な高場に運ぶことです。磯では一見波がこなさそうに見えても、数十分に一度、あるいは潮変わりのタイミングで大きなウネリが発生することがあります。こういった大ウネリのパワーは非常に強く、襲われた荷物は全て流されます。

下田沖磯の沖横根。静かなように見えますが磯の頂上までウネリが上がることも。

最低でも磯が濡れていない完全に乾いた箇所、できればそこから更に2段ほど高い位置に荷物を置き、危ない場合はピトンとロープを使用して荷物を固定します。

また沖磯では天候が急変した際に、わずか数分の撤収の遅れが致命傷になる場合があります。荷物は常にコンパクトに整理しておき、常に不測の事態に備えましょう。

その他磯のルールについて

まず、磯の選択は基本的に船長に任せます。あまりワガママを言ってはいけません。船長は他のお客様との都合、その日の潮の流れ、他船との磯割、エビ網の状況などを考慮して臨機応変に渡礁させていきます。

ルアーをやりたい等の要望があれば、予約の時や乗船前にその旨を伝えましょう。あとは船長に任せます。

※出船前に希望を聞いてくれる渡船屋もあります。

また磯上がりの10分前には荷物を片づけて撤収できる状態にしておきます。ギリギリまで釣りをしたい気持にはなりますが、磯師と渡船屋との間で培われてきたルールであり、スムーズな撤収の為に必要なことです。

沖磯のルアーは夢がある

以上、長々と書きましたがこれらを守って安全に渡礁できるようになれば、沖磯はルアーフィッシングのパラダイスです。釣果だけでなく、自然の猛威も優しさも体で感じ、人としての新たな扉を開いてくれることは間違いありません。

アカハタやカサゴはどこの磯でも釣れます

敷居の高さに気後れすることなく、是非沖磯のルアーフィッシングを開拓頂きたいと思います。